Introduction
精神的不自由さから解放され、より自由になることを目指して、加藤明先生の「一緒に悩み励ます」ことから始まった琵琶湖病院の歩みは70年になります。地域の方々の理解のもとで、われわれ職員はいろいろな経験を積み、数多くの利用者の皆さんから学んできました。この70年間で、精神的不自由さに関する医学的知見や心理学的知見がゆっくりと蓄積されてきています。それらの積み重ねから、ひととひとのつながり、お互いの尊厳を認め合う関係が触媒とになると精神的不自由さが自由さに変わることが示されてきたと考えられます。理知的な路と、感情的な路の二つが補完し合い、それがたどり着く頂を我々はめざしたいと考えています。ともに悩み、ともに歩み、そして次へ、と考えています。
琵琶湖病院 病院長
こんにちは。琵琶湖病院に関心を持ってくださり、ありがとうございます。わたしたちの臨床実践と研修の特徴は「ここでしか得られない経験」にあると思います。メンタルヘルスは、各種自然科学、社会学、身体、哲学、心理学、お金や生活、芸術、言語学など、さまざまな領域に関わっています。琵琶湖病院にはそれぞれに関して、国内外での開かれた繋がりを通じた経験を蓄積した人々がいます。どの視点にも意味と文脈があります。そして、最も大事なことは、この視点の多くがクライアントやご家族、さまざまなチームメンバーからのフィードバックを日々得ていることです。日々これらが交差するところで化学反応が生まれています。何より、それがアウトカムにつながるのです。職場の雰囲気は、このような背景から多様性が大切にされ、人として互いが尊重されることを大切にしています。何が琵琶湖病院で起こっているか興味があるかた、ぜひお気軽にお問いあわせ下さい。
精神科医として要請されること一つ目は患者さんをどう捉えるかです。
精神科医療においては、疾患の原因が不明であり、「疾患か否か」が質的差異で区別できません。従って症状の組み合わせによって、診断を行うことになり、そこに、「恣意的な線引き」が必要になります。病因を探る研究や、治療の確立にはそれは正しいのですが、患者さんを全体的統合的に把握することにはつながりません。つまり、離れたところから患者さんを観察して分析するという方向だけでなく、患者さん側からの「生きにくさ」を積み上げて統合してゆくという方向での作業が必要になります。患者さんの「生きにくさ」の根底にあるものを捉えねばなりません。それには、行動の選択肢の数に注目することです。この選択肢の数が減少していることが、「生きにくさ」であり、患者さんの精神的不自由さの根本です。精緻な診断を行うために、目の前の人の精神的不自由さを明瞭にし、把握することです。それはさして難しいことではありません。疾患の有無に関わらず、あらゆる人にとって行動選択肢の数は、増えたり減ったりするものであり、言い換えれば、誰もが不自由であり、誰もがより自由になれ選択肢の数を増やしていけるのです。つまり、医師自身も精神的不自由さをもち、同じく患者さんも精神的不自由さをもった存在であると認識することから精神科医療は始まります。
二つ目は職業としての対人関係を理解すること、対人関係のプロになるということです。そのためには、「ことば」が重要ですが、それ以外にも表情、声、身振り、などたくさんの表現ツールがあります。メッセージを発するとき、うけとるときに、言葉以外にも注意を払うことが必要です。つまり対人関係は双方向性であることを意識し続けることが必要です。こちらが発した表現で、相手が変化し、相手からの表現でさらにこちらが変化する、それによって何かを発する、この反復です。その上で、感情の制御が重要になります。適切な感情交流ができることが、万能感を排し、燃え尽きることを防げます。
上記は、あくまで理想です。私を含め、当院に勤務する医師は皆まだまだ発展途上です。ともに精神科医としての腕を磨き続けようと思われる方々の応募を願っています。
当院では所属される皆さんの良好なキャリアアドバイザーとなれるよう、以下のような取り組みをしています。
当院は滋賀医科大学精神科専門研修プログラムの連携病院として参加しています。
年間およそ1~2名の専攻医を受け入れています。
日本の大きな問題は少子高齢化です。全体では徐々に人口は減少していますが、まだしばらく高齢者の人口は増え続けます。認知症をはじめ、高齢者の精神科医療は大変重要であり続けます。当院は認知症疾患医療センターを1997年より拝命しており同年より認知症専門の病棟を設けました。現在も地域のなかで重要な役割を果たしています。当院の特徴として1999年より認知症の専門病棟で一切の拘束と個室隔離をせずに治療を続けています。この実現には技術と覚悟をもったチーム医療の存在が不可欠です。この病棟は日本老年精神医学会の老年精神科専門医取得のための研修施設でもあります。ぜひ、老年精神医学の志をもった先生方と共に学んでいきたいと考えています。日本老年精神医学会については、こちらをご覧ください。 -->
滋賀子どものこころ専門医研修施設群
当院は基幹施設を務めています
(稲垣貴彦:研修統括責任者)
滋賀県は人口約140万人に対し、未成年人口は約25万人、出生数は1万人超と、全国の中でも子どもの多い県です。様々な子どものメンタルヘルスに取り組むために、2019年に精神科、小児科だけではなく一般家庭医も参加する「滋賀子どものこころの診療ネットワーク」が設立されました。「滋賀子どものこころの診療ネットワーク」を中心に滋賀医科大学の協力のもと、2022年度末に児童思春期精神科専門病棟を開設予定の琵琶湖病院を基幹施設として、「滋賀子どものこころ専門医研修施設群」を設立し専門医の育成に取り組んでいます。
担当:村上純一(2022年5月OD国際トレーナートレーニング修了)
あなたはメンタルヘルスの分野で、どんな価値観をもって働きたいですか。
私たちは、2017年より人間中心、プロセス志向、権利を大切にするあり方としてのオープンダイアローグ(OD)の導入を目指してきました。最初はとても苦労しましたが、クライアントやご家族の声に耳を傾け、理解しようとする姿勢を何より大切にし、一緒に意味を発見していくプロセスをチームで共有することで、様々な変化がお互いに生じる場に何度も出会い、この仕事に携われる幸せを感じています。2019年からの治療チームの取り組みでは13名(37.1%)の方が地域移行されました。対話によって一緒に対話を学ぶ機会を、国内のODチームとの連携も含めて提案したいと思います。私たちと一緒にチャレンジしませんか。見学もご相談ください。
担当:稲垣貴彦(精神科医療ガイドライン指導医)
当院に来院する患者さん全てに適正な治療を行うこと(治療の均霑化)は極めて重要なことです。精神科治療に関わるガイドラインはいくつか存在しますが、残念ながら普及はまだ不十分なのが現状です。当院ではまだ少ないガイドライン指導医を擁し、ガイドラインを主軸とした治療の適正化に取り組んでいます。
担当:稲垣貴彦(家族心理教育インストラクター)
精神科では心理教育という言葉が多用されますが、教育(疾病教育、疾患教育など)との違いについてご存じの方は少ないのではないでしょうか。患者さんやご家族にとって重要なのは、ショック・困惑・落胆・喪失感・孤立感といったパワーレスな状況からのリカバリーであり、我々精神科スタッフに要求されるのは彼らをエンパワーすることにあります。知識を伝えることはそのための有効な一手にはなりますが不十分で、知識が彼らを傷つける武器にならないように配慮することも必要ですし、彼らが実際に対処する選択肢を増やすことや、社会的なつながりを取り戻すことを促進することが不可欠になります。
当院ではその一形態である家族心理教育のインストラクターを擁し、患者さんやご家族が主体的に治療に取り組める場を提供しています。
パワーレス | 障害特有の問題により対処能力が低下した状態 |
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リカバリー | 障害に圧倒されている状況から戦い、共存する過程を経て障害を越えて生きようとしている状況になること |
エンパワー | 社会的に不利な状況にある人々がその問題を自ら改善するパワーを高め主体的にその状況に働きかけること |
当院の特徴は自由な風土にあると思います。やってみたいと思ったことは、院長先生はじめ様々な職種の仲間たちに相談し実現できます。私は患者さんやスタッフと野菜や花を育ててみたいと思い、病院の広大な敷地でそれを実現させてもらっています。施設課の方に草刈り機や耕運機の使い方を習い、野菜の育て方のコツを患者さんやそのご家族から教えてもらうこともありました。楽しい収穫祭も秋にはあります。
当院は症例が豊富という特徴もあります。幅広く専門がおかれ、措置入院も多く受け入れているため、指定医、専門医取得もし易い環境です。困ったときには、他の医師たちだけでなく、他の職種の方々に気軽に相談に乗ってもらうこともできます。教科書にはないことをたくさん学ぶことができます。そうして、患者さんや、そのご家族たちが笑顔になるところを多く見ることができる病院だと感じています。
専攻医として琵琶湖病院で勤務しています。琵琶湖病院の指導医はそれぞれ専門分野が異なっていることもあり、様々な考え方や知識を勉強することができます。定時で退勤できることが多く、また、当直明けは半日の勤務で帰宅できるため、無理なく働きやすい環境です。看護師やPSWなどスタッフ間で連携がとりやすく、診療に集中しやすいと思います。是非一緒に琵琶湖病院で働きましょう。お待ちしております。